【鵜澤政則の超エッセイ 雑談ではございますが…】
68 10年ぶりに復活した「VIP ISO」
心理学を学んだ人がパチンコスキの僕に以前こんなことを言っていました。「人間という動物は実に便利な動物で、過去の良いこと、楽しかったことは結構覚えていても、痛みや悪い記憶は薄くなるもの」。だから人間は精神的にも過去に潰されず長い人生を生きてゆけるのだそうです。
ゆえにギャンブル系の商売が成立しているのです。パチンコをしている人と話をしていれば一番よく分かるのですが、勝った時の記憶はデフォルメされて持っていて「あの時はよく出たよ!」と覚えていても、負けた時は負けたという記憶はあるものの案外深く記憶にはとどまらずにすぐに消化されてしまい、結果、頭の中には良い思い出だけが沢山残っているものです。
忘れたいことは忘れられるというが、記憶が薄くなってくる。賭け事商売はそういう人間の心理のおがげでいつまでも繁盛するのであります。よく考えると賢いい商売だと思うのです。
■悔しい思いは忘れないっ■
でも僕という人間は性格がその逆で、勝った時のことは忘れてしまうのに、負けた時のことはいつまでも覚えているという、かなりいじけてひねくれた性格をしているようであります。
これは釣りでも同じで、大物を釣ったり、釣り場などで良い思いをしたことはすくに忘れてしまうのですが、悔しかったことはいつまでも未練たらしく「以前、ここで大物バラしたよな〜」と覚えているのです。
今まで何十年か釣りをしていた人ならこの年になるまでにはそういうことのいくつかは必ずあるはずで、そういう痛い目にあった悔しい思いを結構しつこく覚えていて、いつかはもう一度釣り場で晴らしたい…と思っているのではないでしようか。
いつかそれに対抗できるだけの実力を身に付け再びあの釣り場に行って勝負したい、そういう時の勝負タックルをいつか作りたかったのです。
■「VIP ISO」開発ヒストリー■
10年前に「VIP ISO」を作った時にも企画から関わっていましたが、僕も若かったのかその時はやられた悔しさなどということはイメージの中になく、最高の素材、技術を使って奇麗な曲がりで魚を驚かせることなく純粋?に魚を取りやすい竿をイメージして作りました。
が、今度の「VIP ISO」はこの悔しかったという積年の思いをまたあの釣り場で晴らしてみたい…という意気込みで作ったのであります。こんなことを言い始めるということは、僕もそれなりに年を重ねて熟年期に入ってきたということでしよう。
僕にとっては今のダイワの技術なら奇麗な曲がり、魚を驚かせないで浮かせるなんてことは当たり前と思ってます。そこで今度はそれい以上のなにかプラスアルファを求めたのであります。軽くしなやかで手に馴染んで扱いやすい上、大物が掛かってもトルクがあって魚を浮かせやすい竿…ということを常に念頭において企画したつもりです。
「VIP ISO」の再デビューなのでイメージはあまり変えたくありませんでした。好意的な見方で取れば高級、意地悪く見たらちょっとおっさん風とも取れる外観はあまり変わってはいないのですが、人も竿も見かけで判断してはいけないのです。
中身は10年の歳月を経ていますので、全くの別物の近未来志向の竿になっています。リールシートも含めたマテリアルは質実剛健、開発をしている時から約り場で使うのが楽しみで仕方がありませんでした。
メーカーにしても先行投資のつもりなのでしよう、コストは度外視、最高の素材と技術を使って合作ることができうるベストの物を、という方向で動いてくれました。
大物をバラす理由、その1つは竿の硬過ぎで魚を驚かせて突っ込まれたり、逆に軟らか過ぎて魚に散々翻弄されたり、そういうことがかなりのウエイトを占めているものと思います。その辺の不安を取り除いて思い切って勝負できる竿を作らなければ、ということが常に念頭にありました。
現在、市場に出ている「トーナメント」の名の付いた「制覇」や「競技」などのように軽くて切れがよくてという競技志向ではなく同じように軽いのにかなり腰はしっかり強くて、大物と1対1の勝負ができ、なおかつ魚に優しいタッチのトルクフルな竿に仕上がっています。
この竿を企画する時のイメージの中には、僕の過去に痛い目にあった魚達への再挑戦というこんな思い入れがあります。この竿なら今まで僕の釣り人生の中で翻弄されて痛い目にあって忘れることができなかった幾多の魚と、もう一度勝負できそうな感じです。「取り込んでいたら俺の生涯の記録物だったのに…」という魚ともう一度出会えてサシで勝負できるような、そんな気がします。
■ターゲット別で選べる4機種■
タイプは狙う魚種に合わせて4機種をラインアップ。タイプTのメインターゲットは大物クロダイ、Uは口太グレ[メジナ]、Vは尾長グレ[クロメジナ]、Wは本流の大物狙いです。特にタイプV、Wは今ブームになりつつあるマダイ釣りにはピッタリだと思います。
竿に対してのイメージというのは人それぞれあり、またアタックしてくる魚の大きさはその時任せ、大きいものも小さいものも居るので、いざ竿を選ぶ時になると竿の号数選びでかなり迷います。まして「VIP ISO」は、そう安い竿ではないので細かい区分けをやめて、そのターゲットの大物を釣るためにはこの竿!という感じで、選びやすくしました。各タイプにコンセプトがあり、アイデンティティを持たせています。
だからクロダイ用に作ったタイプTは胴に調子が乗ってきて全体は軟らかいのに取り込みは優しく、メジナ用のタイプUは先調子で寄せやすい設計です。またUよりもTのほうが若干穂先が太くなっているのも特徴の一つです。これはクロダイの性格と食い込み方、アワセ方、仕掛けの投げやすさなどを考慮してのことで、各タイプが独立したものに仕上がっています。
■コストパフォーマンスに優れたタモの柄■
また竿作りの企画途中に追加になったモデルが「VIP ISO玉の柄」。企画担当者が「VIP ISO」のおまけ企画で作ったのですが、これも優れものです。「VIP ISO」同様に超高密度SVF力ーボンを採用し、なおかつ超軽量、超弾性のカ−ボン素材とあってその特性がよりよく出ていて、異様な軽さでありながら異常に強いのです。これはかなりコストパフォーマンス的にも優れモノです。
めちゃ扱いやすいと感じたのは、魚を掛けて浮かせ、魚を受けようと水中に網を入れて待っているだけで波とともに魚が勝手に網に入ってしまった時でした。これを使ったら魚をすくうのが上手くなったような気さえします。
■リールもVIP仕様■
「VIP ISO」に加えて黒い塗装の「トーナメントISO Z LBD VIPエディション」というリ−ルまで作ってしまったのであります。マシンカットのロングハンドルはマダイ釣りにはぴったりです。
これらを手にしたら久々になぜか気持ちがそわそわしてうずくのです。早く寒くなってくれないかな?≠ニ毎日天気予報を見なが らシーズンインが待ち遠しくなる不思議な竿です。